亜人 考察

 今回、紹介する漫画は「亜人」だ。

 一応説明をするが、亜人といってもエルフやドワーフとか、亜人ちゃんではない。

 絶対に死ぬことはない生物のことだ。

 

 まず、あらすじから説明していこう。

 高校生の永井圭は、下校中にトラックに轢かれて命を落とす。

 しかし、圭は復活し、日本政府と国民や友人、そして同じ亜人から狙われる。

 以上が亜人のあらすじにあたる。

 

 この漫画を読んでみての感想は、亜人を捕まえたら1億円もらえるくだりはさすがに有り得ないだろうと思った。なぜなら、昨今の社会をみれば1億円をもらえるのなら人間狩りをやる描写にリアリティはないからだ。ただ、物語が進むにつれて亜人の扱いは「不死身なのは気持ち悪いけど、可哀想だよね」といった扱いになった。

 

 ただ、この漫画のリアリティはないわけではない。

 例えば、この作品では作中世界の有名人である政治家や教授が亜人の危険性を作中の日本国民に煽り立てる描写は説得力がある。

 

 だが私は現実味のある描写に魅力を感じたのではない。

 亜人の不死身とは何なのか、それに魅力を感じたのである。

 まず、結論から言おう。亜人の不死身とは自身の人生の渇望であると私は考えた。

 なぜならば、作中の死亡描写のある亜人たちは――ただし、佐藤を除いて――自分の人生を生きられていないからだ。

 主人公の圭は、妹の病気を治すために医者になることを誓い、勉強している。しかし、彼は自らが亜人であることが判明し、健康的で文化的な最低限度の生活を守るために佐藤と戦う決意をしたため、自分の人生を生きてはいないだろう。

 また、下村も母方の墓前で逃げないことを決意するが、彼女の本名は田井中陽子である。下村もまた自分の人生を生きてはいないだろう。

 中野の戦う理由は、自分に生きる意味を与えてくれた人の役に立ちたいからである。だが、中野は自身の無力さを知っているため、彼一人では自分の人生を生きられない。

 田中は始めこそ人類への復讐のために戦っていたが、今では佐藤を倒しけじめをつけるために戦っている。

 彼らは、まだ人生を歩めていないだろう。自身の人生を歩めていないのだから、彼らは生きていない。生きていないから死ぬこともないのである。

 そして、自分の人生を歩むために何度でも自分の人生を心から望み、彼らは甦るのだ。

 

 以上が私の感想および考察だ。

 興味を持ったのならば、ぜひ読んでみて欲しい。

 面白いかどうかは「見ればわかる」